ふるさと納税の知らない不平等さと国税の投入されている

Ⅰ.ふるさと納税…結局誰が得をして、誰が損をしているのか
 ​​確定申告の時期となった。ふるさと納税の処理を進めている人もいることだろう。「ワンストップ特例制度」という簡易な仕組みもあるが、6自治体以上に寄付したり、1月10日の申請締め切りに間に合わなかったりした場合、確定申告が必要になる。私も先日、書類を郵送した。​​

増加傾向、昨年度は6725億円に

ふるさと納税は、住んでいる自治体以外に寄付すると、税金の還付や控除が受けられる仕組み。寄付を通じて、出身地などを応援するというのがもともとの趣旨だ。その際、一定の条件のもと、実質2000円の自己負担で、寄付先の自治体から返礼品を受け取ることが出来る。ふるさと納税のサイトを見ると、肉や魚介などの食品、工芸品、雑貨など多彩な品が紹介されている ふるさと納税の利用は増加傾向にある。総務省のまとめでは、2020年度の実績は約6725億円で前年度比1.4倍に上る。これまでには、自治体間の競争が過熱し、豪華な返礼品が問題になり、返礼品の調達価格の上限が、寄付額の3割とされるなど、制度の改正も行われた。

 利用者にとっては、「2000円の負担で、返礼品がもらえるお得な制度」というイメージが強い。一方で、都市部の自治体などは、税収の流出がもたらす弊害を訴えている。
 「得をするのは寄付先?サイト運営者?…意外な最も損をする人」

 ここで改めて、ふるさと納税制度の「利害関係者」ごとに、メリット、デメリットを検討してみたい。法政大学教授で、東京財団政策研究所主席研究員の平田英明さん(日本経済論)の意見を聞きながら、整理してみた。

 「関係者」として、「寄付先の自治体」「ふるさと納税利用者が住んでいる自治体」「ふるさと納税の利用者」「国」「ふるさと納税のサイト運営者」「返礼品を扱う業者」「その他」を想定した。

 当然ながら、 寄付を受ける自治 はメリットが大きい。「国の仕組みにより、安定的な需要を誘導してもらっています」と平田教授。ただし、返礼品を用意するコストがかかる。まず、調達で寄付金の最大3割は減ってしまう。ふるさと納税のサイトなどで、宣伝もしてもらわなければならない。送付費用もかかる。総務省によると、2020年度に、ふるさと納税の募集に要した費用は全国で3000億円以上、寄付の受け入れ額の45%に達する。「半分程度は経費に使われているということです」

​​  利用者が住む自治 は、税金が流出するだけ。メリットはほぼない。ふるさと納税で赤字になる自治体は、圧倒的に都市部が多い。都市部から地方に税収が再配分されている面では、一定の成功を収めていると言えます」。ただし、地方でも、人気の出る返礼品がないところもある。第1次産業の特産品があるかどうかで、勝ち負けがはっきりする傾向が強い。「再配分が返礼品に左右されるという点、公平性の面ではいかがなものかと考えます」​​

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Ⅱ.ふるさと納税…結局誰が得をして、誰が損をしているのか

​  ふるさと納税の利用者 は、返礼品をもらえて、税金を控除してもらえるお得な仕組みととらえている人も多いだろう。しかし、メリットだけではない。住んでいる自治体の税収が減れば、行政サービスの低下にもつながる。川崎市が2019年度に行ったアンケートでは、「ふるさと納税で減収していることを知らなかった」と答えた人が6割以上にのぼった。現在では、仕組みの認知度は上がっているとみられるが、人気は衰えない。「返礼品は明確にメリットとして感じられるが、行政サービスの変化はなかなか実感できないからでしょう。仕組みの問題としか言いようがありません」​

​​   はどうか。ふるさと納税で減収となった住民税の75%は、地方交付税を受けている自治体であれば、国が穴埋めしている。ふるさと納税では、実は国の負担も大きい。​​

 自治体が寄付を集めるには、 ふるさと納税サイト の存在が欠かせない。「グルメサイトのプレーヤーは飲食店ですが、こちらは自治体です。より有利な紹介をしてもらうために、自治体間の競争が行われます」。原資は税金だ。「インターネットの時代なので、致し方ない面はあるが、税金が流れすぎるのは、制度として問題だと思います」

  返礼品を手がける業者 は、売り上げが伸びるメリットがある。​ただ、もともと力がある業者が選ばれることが多く、恩恵が一部の業者に偏りがちになるという。​

  その他の関係者 として、​気になっていたのは、ふるさと納税を利用していない人だ。ふるさと納税の仕組みや手続きを詳しく知らない人も一定数いる。税金は支払い、返礼品のメリットは受けられない。ふるさと納税で赤字の自治体に住み、行政サービスが低下すればなおさらだ。最も損をしていることになるのかもしれない。平田教授は「情報の格差で損得が生まれる仕組みはいびつだと言えます」と話す。​

利用しない人が最も損する「いびつな制度。国があり方を考えていくべきだ」

 「制度として定着している以上、いきなり廃止するわけにはいかないでしょう」と平田教授。ただ、ふるさと納税で黒字の自治体には、地方交付税交付金を減らすなど修正を検討すべき点もあるという。「多くの問題を抱えていますが、一般の利用者が後ろめたさを感じる必要はないと思います。制度のあり方については、制度設計した国が考えていく必要があるはずです」

 最近は、新型コロナ対策などを目的に返礼品を求めないふるさと納税も増えている。自分が住んでいる自治体にふるさと納税をしても、返礼品は受け取れないが、寄付の使い道を指定することが出来る。

 自宅のパソコンには、今日もふるさと納税のサイトから、お薦めの返礼品を紹介するメールが届いている。さて今年は――。しばらく考えることにしよう。

新聞の記事を引用しています。良い点だけが誇張し報道され、リスクが紹介されていない点はおかしいので、あえて、すべての人が新聞を見ているわけでないのでBLOGにて紹介することにしました。